A.
取締役等の役員には様々な義務が課せられており、また会社や第三者に対する責任があります。義務の内容としては、①善管注意義務・忠実義務、②競業避止義務、③利益相反取引の規制などがあります。これらの義務違反が認められる場合には、会社に対する損害賠償責任を負うことがあります。
ご質問の「名前だけ取締役になった場合」であっても、名義を貸した後、会社業務執行に無関心で、各取締役の職務執行の監督を行わず、会社に対して業務報告をしない場合などには、善管注意義務・忠実義務違反に問われ、会社に生じた損失について損害賠償しなければならない可能性があります。また、第三者に対しても「その職務を行うにつき悪意または重過失」があったときには損害賠償責任を負うこともあります。
このように、取締役には多くの義務と責任があります。万一、何らかのトラブルが生じた場合に「頼まれて名義を貸しているだけで、実は取締役ではありません」といっても、簡単には責任回避することはできません。取締役に就任する場合には、各種法的義務が課せられているということに注意し、安易に名前だけの取締役となることは避けた方がよいでしょう。