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平成24年

生活保護基準引き下げに強く反対する会長声明

2012年(平成24年)11月13日

生活保護基準引き下げに強く反対する会長声明

大阪司法書士会
会長 山内 鉄夫

1.現在、政府において生活保護基準引き下げに向けた動きが進行している。
 2012年8月17日に閣議決定された「平成25年度の概算要求組替え基準について」においては「生活保護の見直しをはじめとして合理化・効率化に最大限取り組む」とされた。これを受けて厚生労働省が公表した2013年度の予算概算要求には「生活保護基準の検証・見直しの具体的内容については、予算編成過程で検討する」とされ、同年10月5日の社会保障審議会生活保護基準部会において、生活扶助基準について人員・年齢・級地について一般低所得世帯との消費実態との比較により基準を検証することが提言されている。さらに、同年10月22日、財政制度等審議会財政制度分科会では生活保護基準の切り下げに向けた具体的提言が行われた。

2.しかしながら、生活保護基準は、単に生活保護利用者に交付される保護費の基準であるだけでなく、我が国における最低生活保障基準(ナショナル・ミニマム)の重要な指標でもある。これを引き下げれば、次のような影響が考えられる。
 生活保護基準は、自治体の低所得者に対する種々の減免制度(地方税の非課税、国民健康保険の保険料・一部負担金の減免、介護保険の保険料・利用料の減額、障害者自立支援法による利用料の減額、就学援助の給付等)の適用基準にも連動しており、例えば、就学援助については、大阪府下では小中学生の21%がこれを利用しているが、20市町村でこの適用基準を生活保護基準あるいはこの“1.数倍“としている。
 生活保護基準が下がれば、これらの制度を利用できなくなり、ひいては子どもの教育や医療、福祉サービスを利用できなくなる低所得世帯が増加することは避けられない。
 この他に、生活保護基準は最低賃金の引き上げ目標額ともなっている(最低賃金法第9条3項)。生活保護基準が引き下げられれば最低賃金も引き下げられ、非正規雇用などの低所得就労者の所得に大きな悪影響を与えることになる。
 以上のとおり、生活保護基準の引き下げは、生活保護利用者以外にも多くの低所得者・労働者の収支バランスを大きく悪化させる。これらの層の消費が落ち込むことによる景気への影響も無視できないであろう。

3.そもそも、生活保護の捕捉率(生活保護が利用要件を満たす収入・資産を有する者の中で、実際に利用ができている者の割合)は2~3割にとどまり、生活保護基準以下の収入・資産にも拘わらず生活保護を利用できていない者は数百万人にのぼる。むしろ、このような多数の受給漏れの状況を改善することが先決である。
 また、比較の対象となっている低所得世帯には、この受給漏れ世帯が多く含まれており、その消費実態は当然ながら生活保護世帯より低い。このような低所得世帯との比較により生活保護基準を引き下げることは、本末転倒である。

4.貧困の拡大に歯止めがかからない中、生活保護の必要性・重要性はますます高まっている。当会が昨年実施した生活保護電話相談会でも、半日で74件もの相談があり、年金がない、収入が少ない、病気で働けないという相談者から、将来的に自分が生活保護を受けられるか不安という声が多く寄せられた。
 そのような実態に目を向けずに、徒に財政負担を軽くすることのみを目的として、生活保護基準を引き下げれば、経済的困窮者をさらなる困窮の極みに追いやり、餓死・孤立死・自死・貧困故の犯罪等を誘発することになりかねない。

5.従って、当会は、この生活保護基準の引き下げに対して強く反対するものである。

「市税の減免措置の見直しについて(素案)」に対する意見書

大司発第781号
平成24年10月12日

大阪市財政局税務部課税課 御中

大阪市中央区和泉町1丁目1番6号
大阪司法書士会
会長 山内 鉄夫

「市税の減免措置の見直しについて(素案)」に対する意見書

  時下、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
 さて、平成24年9月14日に公示された「市税の減免措置の見直しについて(素案)」に対して、大阪司法書士会は、下記のとおり意見を取りまとめましたので、提出いたします。

1.P5・P6 について
 市税の減免措置の見直しの基本的な考え方として、公益上の必要があると認められる場合の減免措置は、一般的に団体運営補助的な性格を有することから原則廃止(P5)し、公益上の必要性を理由とする固定資産税・都市計画税の減免措置を継続することが必要な主な場合として、「本市政策目的の実現に寄与する事業・活動の実施にあたり、施設等(固定資産)の使用が必要な場合で、かつ、当該事業・活動を支援する上で、施設等の固定資産税・都市計画税相当額を軽減することが相当である場合、特定の範囲の者に対して、固定資産税・都市計画税相当額の全部(又は一部)の軽減を一律に実施することが効果的・効率的な場合に限定されます。」とありますが、減免措置を原則的に廃止するのではなく、各々の団体のそれぞれの事業の公益性と当該固定資産の使用の必要性を考慮した上で、総合的に判断すべきであると考えます。

2.P7について
 公益上の必要があることを理由とする減免措置について、見える化を図るために、「①「減免措置創設の要求」制度の構築、②減免期間の設定、③予算において減免措置の政策上の位置づけの明示を検討する。」とありますが、減免を廃止するのであれば、これらの仕組みの実施と廃止の時期を同じくするよう検討されたい。

3.「各減免措置の考え方」について
 P13以降の団体について、見直しを行う(行わない)理由として、「これらの減免措置については、当該資産の用途の公益性や当該資産の利用等による収益性などを考慮して実施してきたものであるが、引き続き財政支援が必要であるとしても、一律に固定資産税・都市計画税の減免措置による支援である必要性はないため、減免措置を廃止する。」とされていますが、いずれの団体も、勤労者支援、公衆衛生、児童育成、福祉、経済活性、国際理解、地域社会、消費者利益、教育・スポーツ、国土利用、国政運営、文化・芸術等、公益的な目的に寄って減免がなされてきたものです。 
 当会においても、会館における市民のための各種相談会実施、AEDの設備の他、法教育、高齢者虐待問題、自死防止対策、雇用・労働問題、経済的困窮者支援、DV・こどもの権利擁護、犯罪被害者支援等、様々な公益的活動に積極的に貢献し、また、公益的な目的に会館を使用しています。 
 減免措置を廃止するにあたっては、各団体の公益性や施設の必要性を充分に考慮した上で総合的に判断をすべきと考えます。

「罹災都市借地借家臨時処理法の見直しに関する担当者素案」に対する意見書

大司発第593号
平成24年8月31日

法務省民事局参事官室 御 中

大阪市中央区和泉町1丁目1番6号
大阪司法書士会
会長 山内 鉄夫

「罹災都市借地借家臨時処理法の見直しに関する担当者素案」に対する意見書

  時下、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
 さて,平成24年8月1日に公示された「罹災都市借地借家臨時処理法の見直しに関する担当者素案」に対して,大阪司法書士会は,下記のとおり意見を取りまとめましたので,提出いたします。

第2 被災地一時使用借地権(仮称)

【甲案】
①について
 「被災地において設定される借地権に関し,政令の施行の日から起算して〔1年/2年〕が経過する日までの間に存続期間を〔5年以下〕として借地権を設定する場合については,借地借家法第3条から第8条まで,第13条,第17条,第18条及び第22条から第24条までの規定は,適用しない」旨の制度を設ける,とあるが,まず,〔1年/2年〕では短すぎる。例えば,東日本大震災の例を見ても,最低でも3年は必要である。
 また,〔5年以下〕とあるが,新制度では現行法でカバーできない部分をカバーすべきであり,10年未満とすべきである。

(注1)について
 「借地権を設定することができる期間をどの程度とするか,その期間を政令で延長することができるものとするかどうかについて,なお検討するものとする」とあるが,延長することができるとすべきである。

(注2)について
 「借地権の存続期間の上限をどの程度とするか」とあるが, 上限の程度は,更新を許さないのであるから10年程度は必要である。あるいは,5年として1回のみ5年以内の更新を認める方法も検討すべきである。
 また,「存続期間の下限について規律を設けるものとするかどうか,規律を設けるものとする場合にはどの程度の期間とするかについて,なお検討するものとする」とあるが,設ける必要はない。

(注3)について
 「③の書面を公正証書に限定するものとするかどうかについて,なお検討するものとする」とあるが,書面であれば良く公正証書に限定する必要はない。事業用定期借地権の様に内容を審査する必要があれば別段,当該契約にはその必要はない。

第3 借地権保護等の規律

1 借地権の対抗力
②について
現実に未登記建物が多数存在するので,①の摘要がどの程度あるのか調査が必要である。また②のみを許すことも検討すべきである。
 「①に規定する場合において,借地権者が,滅失した建物を特定するために必要な事項及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときも,当該借地権は,なお第三者に対抗することができるものとする」とあるが,現実には,この掲示の様な手立てを講じることは困難であり,掲示の維持も困難である。不動産登記制度を利用した公示方法を創設すべきである。
 「ただし,政令の施行の日から〔3年/5年〕を経過した後にあっては」とあるが,行政上の建築制限が長期に及ぶことも考慮すると,3年/5年では短すぎる。7年~10年程度は必要である。
「その前に建物を新たに築造し,かつ,その建物につき登記した場合に限るものとする」とあるが,建物の建築に着手することで足りる。

4 借地権者による土地の賃貸借の解約等について
 「政令の施行の日から起算して〔1年〕を経過する日までの間は」とあるが,1年はあまりにも短く,3年程度は必要である。また「解約の申入れをすることができる旨の制度を設ける」とあるが,相手方(土地の所有者,あるいはその承継人)の特定は相当困難であり,新たに公示による意思表示の制度を創設すべきである。
 なお,この場合,当該申入れ等があったときに,借地権は即時消滅するものとして差し支えない。

5 土地の賃借権の譲渡又は転貸
②について
 「政令の施行の日から起算して〔1年〕」とあるが,1年ではあまりにも短い。3年程度は必要である。

第4 優先借家権制度の在り方等

【乙案】
① 賃貸募集前の通知 について
 「政令の施行の日から起算して〔3年〕を経過する日までの間に」とあるが,3年では短すぎる。5年程度は必要である。
② 誠実交渉義務 について
「政令の施行の日から起算して〔3年〕を経過する日までの間に」とあるが,3年では短すぎる。5年は必要である。また「信義に従い誠実に交渉しなければならないものとする」とあるが,法的効果が極めて限定的であり,ADR機関利用の義務付け等も検討すべきである。
③ 第三者への賃貸禁止 について
 「当該申出があった日から〔2週間〕の間は」とあるが,2週間では短すぎる。3か月程度は必要である。

(注2)について
 「借家条件を示さなければならない」とあるが,交渉の叩き台を用意することに意味はあっても,それを当初から示すことは交渉を困難にする虞があり,条件の策定も容易ではないため適当とは言えない。

(注4)について
 「建物の全体について,一律に」禁止するとあるが,効果に比して影響が大きすぎ不適当である。

当会相談事業におけるファクシミリの誤送信について(会長声明)

 当会が本年4月22日に大阪市内の区役所において行った無料法律相談の相談票を、翌日担当者間でファクシミリにより送信したところ、番号を誤ったため全く関係のない方に送信してしまいました。受信された方からすぐにご連絡があったため、直ちにその方とお会いし当該相談票を回収いたしました。
 当会は相談者の方々にご連絡し、説明と謝罪をさせて頂きました。
 今後当会としましては、相談事業等における文書の取扱い方法を確認するとともに、情報の管理を徹底し、二度と今回のようなことが発生しないよう対策を講じてまいります。

平成24年(2012年)4月25日
大阪司法書士会 会長 山内 鉄夫

会社乗っ取り事件に司法書士が関与した疑いがあるとの報道についての会長談話

 本年1月に大阪市内の不動産会社役員らが、ホテル経営会社の経営権を奪うために無断で法人登記を変更したとして電磁的公正証書原本不実記録・同供用などの疑いで逮捕され、この登記の変更に司法書士が関与している疑いがあるとの報道がされました。
 司法書士には、取引の安全と法人制度の信頼を維持するため、真正な登記の実現に努め、法人登記制度の発展に寄与する等の使命(注)があります。当会会員は、この使命を再度自覚し、不実の登記申請の疑いがある依頼に応じるなど、市民の信頼を損なうことのなきよう注意して執務を行うよう願います。
 また、市民の皆様におかれましては、このような報道に接し不安に思われることもあろうかと存じますが、当会では、今後も法人登記は司法書士に安心してご依頼頂けるよう、会員に対しなお一層研鑽するよう指導していきます。

2012年(平成24年)2月16日
大阪司法書士会 会長 山内 鉄夫


司法書士倫理

第8章 商業及び法人登記手続に関する規律
(商業法人登記制度への寄与)
第55条
司法書士は、取引の安全と法人制度の信頼を維持するため、真正な登記の実現に努め、商業登記及び法人登記制度の発展に寄与する。
(法令遵守の助言)
第56条
司法書士は、登記手続を受任し又は相談に応じる場合には、依頼者に対して、法人の社会的責任の重要性を説明し、法令を遵守するように助言しなければならない。
(実体関係の把握)
第57条
  • 司法書士は、登記手続を受任した場合には、議事録等の関係書類を確認する等して、実体関係を把握するように努めなければならない。
  • 司法書士は、議事録等の書類作成を受任した場合には、その事実及び経過等を確認して作成するように努めなければならない。

「会社法制の見直しに関する中間試案」に対する意見書